右手の人差し指がじくじくと痛んだ。
爪と皮の境目、爪半月の付近の溝が物を持つ時に痛んだのだ。
我慢できない程ではないが、気になる程度には痛かった。
ささくれを取ったのが原因だろうか?
よく見ると爪半月付近の指が赤らんでいた。
私は左手の人差し指で右手の人差し指のじくじくと痛む所を押した。
ぐっと爪と皮との境目を広げるように押し広げた。
すると、ぷくっと黄色い粘り気のあるモノが出てきた。
どうやら、膿みが出てきたようだ。
黄色い粘り気のある膿みは1mm程度の大きさであった。
手身近にあったティッシュでさっと拭った。
じくじくとした痛みは、多少引いたように感じた。
それにしても、黄色い粘り気のあるこの膿みが私の体内から出てきたことに驚いた。
この黄色さは一体何であろうか、この粘り気は一体何であろうか?
たった1mmの膿みの存在について、私は何も知らない。
私の体内にこのような黄色い物質があるのを目の当たりにして、私の身体の不思議さを考えた。
当然のように流れる血液のことでさえ、私は多くは知らない。
私の身体なのに、私の身体のことを私は知らずに生きている。
33年、これほどの無知であっても生きていける。
知らなくても生きるだけなら生きていける。
知っていても、生きることに大した寄与がある訳でもない。
しかし、私を生かすのためにこの小さな膿みが存在した。
私が知らなくても、私の身体は私を生かそうとしている。
私を知らなくても、私の自意識は私の内側に存在するのと似ている気がする。
右手の人差し指がじくじくと痛んだ。
その痛みが私に教えてくれているのかもしれない。
私を生かす存在に気付いて、と。
人差し指の痛みから想像した、私の存在意義を答えを出せないままに増やす。